![]() 「そーちゃん鬼ごっこしよ!特別ルールでね、鬼はこの太刀で勢いに任せてタッチするの!」 「オイイイそれどこから持ち出したの!近藤家の家宝の刀だから!!つーかそんな物で勢いに任せてタッチしたら首ぶっ飛んじゃうからアアアア!!!!!」 「よっしゃ、鬼は俺に譲りなせェ」 「だからダメだって、そんな危険な遊びしちゃダメだからねッ!!ほらッ、ソレ渡しなさい!!」 「あ、分かった。いっちゃんも入れてほしーんでしょ。しょーがないなぁこれケイドロだからいっちゃんはどーみても泥棒ね。」 「俺悪人顔?!つーかこの人数でケイドロ?!つーか、つーかアアアア、!!ソレ渡しなさいイイイイ!!!」 「いっちゃんのケチー!」 穏やかな昼下がりに道場の敷地内に響く子供らの声はやんややんやと毎日お祭り騒ぎのようだ。がこの近藤道場の門下生となって2ヶ月、総悟ことそーちゃん、勲こといっちゃんとは本当に親しげに彼らを呼んでいる。今までが成してきたこと全てが嘘かのようにその光景は和やかなとある道場の一日として描かれていた。 「ミッちゃん、お土産!激辛せんべ〜!」 「嬉しい!ちゃんいつもいつもありがとうね。」 「ミッちゃんはいつもいつも遠慮しすぎなの!それに私、女の子の友達ってミッちゃんしかいないしね。」 「そうなの?フフ。私もよ。一緒ね。」 ミツバは柔らかく笑う。この笑みに何度憧れた事か。ミツバはにない物全てを持っていた。今まで金を連中から巻き上げて生きていた汚れた自分とは違う。気品溢れて、女の子らしくて、年が近いのにこうも女で一つでそーちゃんを養ってきたミッちゃん。彼女を纏う雰囲気一つ一つが、綺麗なミツバの人生を物語っていた。美しい、ひと。 「ミッちゃん羨ましいなァ」 「あら、どうして?」 「だって女の子らしくて、私みたいなはねっかえりじゃないし?綺麗だし、おしとやかだし。」 「おだてても何も出ないわよ?」 「だーァかーらァおだてとかじゃなくてェ・・・・・・」 「私だってちゃんが羨ましい。」 「へ?」 「ちゃんはいつも楽しそうで、元気で・・・・・・いつもキラキラ何か光ってる。」 そう答えるミツバの方が、その時のにとっては光ってるように見えた。けれどその仕草一つ一つに女でさえの私が見惚れてすっかり聞き入ってしまっている。 「それにちゃんだって綺麗。背高いし、男の子よりもずぅっとかっこいいわよ。」 「な・・・おだてても何も出ないよ!」 「フフ。おだてなんかじゃないわ。」 するとミツバは静かに目を伏せる。夕焼けが彼女の透き通る白い肌を焼いてるように見えた。紅く染まる彼女の顔もその時には儚く、そして刹那に掻き消えるような 一瞬の美しさだ。 「あなたは私のないもの。私はあなたのないもの。それを補っていけば、私達最強、かもね。」 「最強?あは!そりゃいいや!」 はミツバの笑顔に吸い込まれるように自分も笑う。この時ほど世界が美しいと思えた時はない。空が寝静まる前に見たあの時の煌々とした赤蜻蛉の羽の光り。素朴な風景に馴染む鮮やかな飾り。いつまでも、いつまでもこの時が続けばと。 「私、ミッちゃんとずーっと一緒にいたい。」 が縁側から背伸びして紅く染まる頬を隠しながら言う。横目で沈む陽を眺めるミツバを盗み見ると目が合ってしまった。しかしそんな様子のに物怖じすることなく、ミツバはふわりと何をも包み込んでしまいそうなその笑顔で。 「フフ。私もよ、ちゃん。」 優しく答えたのだった。 戻ル 表題 進ム 080413 |