「なんか・・・シリウス痩せた?」

「・・・・・・何か言ったか?」




リーマスが可哀相なものを見る目つきで俺に一瞥をくれる。苛つくんだよ、このヤロウ。それよりこの2日間でそんなに俺は見て分かるほどやつれたのか?見て分かるほどにもか?そう脳内で反芻していると余計に気分が悪くなってきた。機嫌も悪くなってきた。俺のこれまでの2日間はフィルチのどんな罰よりも、家のどんな退屈で吐き気がする純血主義だけが集まるパーティも体を精神に疲労をきたした。今日は何があったって?そうかまだ説明していなかったか。説明するほど俺には体力も残されちゃいないけど、まぁ話しておこう。とりあえず時は全ての授業が終わった放課後。そう、今日は一段といつもの日々よりも格別に素晴らしい日になるはずだった。あのさんがいなければ。










そう、今日の放課後にはクイディッチのチーム練習があったのだ!クイディッチのシーズンも近くなり、チームのヤツらのやる気もみなぎるみなぎる。そして俺とジェームズもその一人、だったわけだ。それに飛行中はさんから邪魔されることもない。それを考えるとどうも胸が疼いてくる。あぁ、大空は俺の憩いの場だ、天国だ!そう感激しすぎて思ったことを素直に口にしてしまった俺は周りから不審な目で見られた気もしたが、まぁ・・・・・それはいいとしよう。そう信じて疑わなかったんだ、俺は。その時までは。




「よーっし、練習始めるか!!」

「ちょっとちょっとキャプテンは僕なんだけど、なんでシリウスが仕切るの」

「ぐちゃぐちゃ言ってないで早く始めようぜ、ジェームズ!」

「・・・・・・なに無駄にはしゃいでんのか」






ヤツのせいでこんな災厄続きの日を過ごしているというのにその態度は何だと俺は凄んだ。しかしヤツに俺の睨みが利くわけもなく、白々しくヤツは鼻歌でも歌いながらチームのみんなの前に立つ。





「えーそれじゃ今日は守りについて徹底的に行おうと思います、次のスリザリン戦の時ヤツらに汚い手で邪魔されないようにね!」





と告げると選手は箒に跨り、靡く風に乗りながら大空へと舞い上がる。俺もそれに続いて空へと飛び立つ。あぁ、やっぱり箒に乗って空を自由に動き回るのは好きだ。むしろこれは俺にとって悪戯と同等に生きがいなのかもしれない。大空バンザイ!!クイディッチバンザイ!!とか思ってた矢先に毎度練習を見に来ているファンやら通りすがりの黄色い声援からずとび抜けて大きい声で叫んでるやつがいたので目をやった。




「げ・・・・・さん・・・」

「僕がお呼びしたんだよ、シリウスくん!」




感謝したまえと得意げに言うヤツを俺は本気で呪い殺してやろうかと思うほど俺はジェームズに強烈な睨みを利かせた。コイツは本当に俺の親友なのだろうかと疑問に思えてくる。そうだ、ブラッジャーで軽く小突けばヤツだって俺が怒ってると分かるだろう。それにブラッジャーに当たったくらいで骨折なんかするヤツではない。伊達にジェームズは軟いヤロウではないことは俺が一番知っている。ふつふつと込み上げてくる怒りに身を任せ、バットを汗だくの手で握ると俺は標的から少し外れて狙いを定める。








バシッッ








それは見事にヤツの箒の柄の部分をかするはずだった。はずだったのに。ジェームズは上手い具合にそれを避けて(皮肉にも無意識だろうが)ブラッジャーはひゅーと風を切る音を立てて地へと向かっていった。と思った次の瞬間それは見事に観客席の方に飛んでいってきゃー!!と大きな叫び声が聞こえた途端。




さん!!」




俺は無意識の内に叫んでいた。箒にしがみ付きスピードを最高に上げて風よりも光よりも早く飛び事態を防ごうと手を伸ばしたがそれも遅い。ガーンと無残な衝突音は当たり中に響き、さんはブラッジャーを喰らった右腕を押さえる。





















そして次の瞬間、さんは気を失って倒れてしまっていた。