「なんでアイツ連れてきたのなんでアイツ連れてきたのなんでアイツ連れてきたの」 「まぁ・・・それは深い理由があってね、シリウス怒らないでくれよ」 「いや、怒るだろ。お前、俺があーいう類の女の子苦手だって知ってるだろ、お前しんゆうとさんとどっちとるんだよってああ?さんかぁ?」 「まぁまぁまぁ落ち着きたまえよ、僕のしんゆう」 「ったくなんだって言うんだよ・・・」 俺はあーいう外見でしか人を判断しないやつはいけ好かないと思っている。そうと分かっているジェームズはなぜ俺のところにさんを連れてきたんだろう。俺が女の子とか恋愛とかいうのに興味が全くないのをヤツは知っている。ジェームズはいやぁとかなんとかほざきながら頭をぽりぽりかくとここではなんだから、と男子寮へと続く階段の下にいる俺を寮へと促す。ちなみに、さんは談話室に置いてきてしまった。あの後俺はジェームズの胸倉を掴んでそのまま男子寮の階段へと直行したのだからいたしかたない。 早速寮へとつくとジェームズは終始にやけていたので何だかこっちも気味が悪かった。ヤツが終始にやけていて良い事が起こった例がない。 「はぁ?!惚れ薬?!」 「あはは、僕の愛しのエヴァンズにちょーっと試しに飲ませようかと思ったら間違って隣にいたの飲み物に入れちゃってね。しかもその上失敗したようで君、シリウスの事が好きになっちゃったみたいなんだ」 あははーごめんねーと軽く笑って受け流そうとするヤツが一瞬とてつもなく腹黒いヤロウに見えたのは見間違いではないだろう。これは絶対ヤツの仕業だ。大体コイツが惚れ薬の調合を間違えるなんて問題外だ。それにいやに飄々としているところがなんとも怪しい。鋭くジェームズを睨みつけた俺だがヤツはぎくりとしたのか口笛なんて吹き出しやがった。 「お前が調合間違えるとかマジ有り得ないだろ、本当の事を、言え!」 「だってしようがないじゃん、ピーターが調合してる時になんか誤って鍋に入れちゃったみたいなんだよ。僕もそれに気付かなくてさ、挙句の果てにはエヴァンズとのゴブレット間違えちゃうしさぁ・・・・・・」 するとジェームズは途端口を尖らせていじけだし体操座りでのの字を指で描く。男のくせに気色の悪いヤロウだな。その時丁度部屋に入ってきたピーターに一気に俺は詰め寄り、もの凄い剣幕でピーターに差し迫った。 「おい、本当なんだろうなエヴァンズの惚れ薬・・・・・・お前がダメにしたのかよ」 「ええええ、そ、そうだけど、なんで僕がシリウスに怒られなきゃ、いけないわけ?」 ピーターは演技が下手なのですぐに顔に出る。どうやらピーターも充分怯えきって肩を震わすほどだったのでそれが本当のことだと俺は認識せざるを得なかった。しかし、さんも可哀相な人だ。もしかしたらさんにも本当に好きなヤツがいたかもしれないのに。俺は恋なんて気持ち到底分かりやしないがちょっとだけ同情はする。もしさんの惚れ薬の効力が切れたら意地でも迷惑をかけたジェームズに謝りに行かせようと俺らしくもなくそう思った。 「で、惚れ薬の効き目はどれくらいなんだ?」 「多分1週間ぐらいかな・・・まぁ、だからその間はを少しだけでも構ってあげてよ、ほら好きな人に冷たくあしらわれたらだって可哀相じゃん」 「さんが可哀相なのはお前のせいだろ、俺は知らねぇよ」 「わ、シリウスって案外薄情者なんだね」 ピーターが余計な口を挟んだのできっと睨むとピーターはヒィと小さく悲鳴を上げて一歩後ずさりする。諸悪の根源にも関わらずジェームズのヤロウは俺を恨めしそうに一瞥してくるのではぁと俺はひとつ、大きな溜息をついて言った。 「ったく、挨拶しかしねぇからな」 するとその時丁度タイミングを計って出たかのようにリーマスが部屋に入ってきて開口一番にこんな事を言い出した。 「さん、シリウスのこと呼んでるみたいだけど」 この時ほど俺の発言に後悔した時は、これまでにも、この先にも永遠に無いと思った時だった。 |