それは花々を行きかう蝶のような女だった。、グリフィンドールの舞姫は。
「セブルス、ご機嫌いかが?」
「ふざけるな」
「あら、ふざけてなんかないわよ」
この女はいつもふざけた口調で俺の下へひらりひらりとやってくる。僕は正直この女がなぜグリフィンドールのような単細胞の集まりどころを住処としているのかが理解できない。彼女を決して褒めているわけではないが、狡さとその気品は決して獅子のものではなかった。
「相変わらずつれないのね」
「用がないなら消えろ」
「冷たいわね、セブルス」
気安く名前を呼ぶな、と反論したかったが、そこでふと気づく。このやりとりを今まで何度かわしてきたか、と。彼女は相変わらず悪戯っぽくほほ笑むだけで、僕は図書室で本から顔をあげ睨むように彼女を一瞥する。目が合うとにこりと微笑まれた。くそ、調子が狂う。
「本以外のものに興味はないの?たとえば、私とか。」
「うるさい、余計な御世話だ。」
「そりゃ、私だって本は好きだけれど」
肩まで流れる髪を振りはらう姿は人間的に見れば美しい。しかし今の僕にとっては目障りの他ない。僕の読書を邪魔する時間はいつも月曜の昼休み。僕は毎日この場所に、ひっそりと、できるだけ地味にここで本を読んでいるというのに彼女はいつの間にかのこのことやってきた。僕は神妙な顔で彼女を無視すれば、ふざけた言葉が返ってきた。
「あなたってそういう顔をしていればいい男なのに」
この言葉ほどお前に言われたくない言葉はない。

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