陽に靡いた髪が尾を引いて目が離せなかった。流れる目線を掴まえようと追いかけてしまう。気まぐれに笑いかけ、耳に髪をかける愛おしい小指に唇を落としたくなってしまう。 薄く紅が引かれた唇が弧を描いた瞬間、白い歯を見せて眩しく笑いかけてくる。その無邪気さに鳩尾からむず痒さがこみあげてきた。 粗く編まれた麦わら帽子が湿った風で飛ばされそうになるのを両手で押さえる仕草も、水鳥が風に乗って渡るのに瞬きを忘れて瞳を輝かせるのも。

いつまでも、ずっと、傍で見ていたい。

その目に映る景色がいつまでも鮮明であってくれよ?ホグワーツの中の雑踏の中から見つけた、俺だけの宝物。

なーんて言ったら、彼女に頬を膨らませて睨まれるんだろうな。

最初はわたしから告白したのに、こっぴどく振ったのはシリウスでしょ?と胸に痛い釘を刺されてな。そう、あの時俺はアキの魅力なんぞ小さじひとつ分も分かっちゃいなかった。

濡れずに済むようつまんだ空色のワンピースの裾から覗いた滑らかな脚が水粒を浴びて、生唾を飲み込む。

「あれ?喉乾いた?そういえばバタービール冷やしてきたんだっけ」

違う。言いたいのはそれじゃない。

こんなにいい女になったというのに根っこの部分は変わっちゃあいない。と思った矢先、艷やかな黒髪の尾すらなかった。止める隙もない。ざぶざぶと波を突き進み砂浜に戻ろうとするのを見て、危なっかしいなとやれやれと首を振る。

……だいたい、今更止めても無駄だろうしな。

「きゃ」

大きな飛沫が飛んで、麦わら帽子が宙に一回転した。だから言わんこっちゃない。沈んだと思ったら息継ぎにざぶんと顔を出し、しょっぱい~と潮水に目を瞑るなんてことない無邪気な女。頬に貼り付く髪を払いのける仕草が、甘い。

ああ、今年も眩い夏が来たんだ。

懲りたことも知らずに笑顔を見せる彼女が幼気ない、俺だけの風物詩。

——季節が何度巡ろうとも、にはどうしても。

「ヤラれた、参った。降参」

粗く髪をかきあげると、俺も自ら潮水を浴びに行く。勢いよく飛び込むと塩辛い水が舌に乗った。あぶくが昇ると同時に視界が開け、海の匂いが胸いっぱいに満ちていく。

「シリウスだってドジじゃない」

……こうやってコイツを甘やかしてしまうんだ。あーなんてダメな男なんだ、俺は。

でもうどうしたって、いつだって。

淡く、耳に解ほどける軽やかな声に唆されてしまう。

柔い禁断の果実で惑わしてくれる。それが、お前なんだよ。



Be Mine,Girl!




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