それはじりじりと少し汗ばむ、そんな季節だ。 新緑が爽やかに景色を飾る。俺はそんな季節に生まれた。

自分が生まれた月のことなど実はあまり考えたこともなかった。 ただ、毎年欠かさず祝ってくれる仲間と、恋人がいる。 俺はいやでも自分の誕生月のことを思わずにいられなくなった。 両親からの祝いの言葉も前よりも嬉しく感じるようになった。

生まれてよかった、とはこういうことなのか。 まだ発達途上の俺の体や心は十五回しかこの季節を迎えたことがない。 風が涼しく、夏に差し掛かる日差しが眩しい。梅雨の匂いもする。 雨が段々と増える中、半袖でも過ごせる涼しい頃だ。

この一瞬一瞬に見える季節は、俺だけのものにしておくにはもったいない。 今年はいったい俺を喜ばせるために何を用意してくれているのだろうか。 贅沢にも自分が祝ってもらうことを当たり前だと思っている。 それはあまりも傲慢すぎるのかもしれない。けれどそう思わせてくれる幸せに思わせてくれる人がいる。 俺はそれだけでも有り難い、としみじみと心の中で思い毎日を過ごす。 有り難い、と思える親しい人たちがいるのは素晴らしいことだ。 なんと自分は恵まれたことだろう。そう思える、そしてその思いを噛みしめる。

お前と歩きながら、そんなことを考える。齢十五。未だ、十五。 赤紫色や薄紅色のツツジ、白の純粋無垢のような色のツツジが風に揺れる。 風に揺れる花々と共に、彼女の頬も上気して赤くなる。ああ、まるで薄紅色のツツジのようだ。 甘苦い、ツツジ独特の香りが漂う。その香りだけで、何か熱い感情がこみ上げてくる。 彼女の瞳は潤み、俺は彼女の小さな頬を手で包む。 俺の無骨な手で申し訳ないが、この愛しい感情を誰にも渡すことはできない。 幼き頃、ツツジの蜜を好奇心で味わったそんな思い出を大事にしまっておきたい、そんな感傷的になってしまうほどに。 だからツツジの咲くこの季節、毎年俺は突然の雨に濡れようともこの月が美しく思えるようになった。 俺の手で彼女を守っていきたい。いつも俺に未来への夢を見させてくれてありがとう。 五月、それは俺が生まれた月。ツツジが咲き誇るころ、お前の笑顔と共に俺は幸せの頂きにまで誘われるのだ。