「計算高い女だな」って蓮二は口の端で嘲笑ってるだろう。そう、わたしたちは終わりに近いのだ。 わたしはどんなことをしたって蓮二の傍を離れたくない一心であれこれ策を練った。そう、あなたの好きな「計算高い女」。蓮二がわたしとの終わりの道を歩んでると気づいたのはいつ頃だったんだろう。わたしがそれを感じ取ったのはいつ頃だったんだろう。思い出せないほどぼろぼろとわたしたちの関係は崩れてきていて、そしてわたしはそれを一生懸命繕っている。修復しているわけではない、一本の赤い糸のほつれを誤魔化して指で繋げているだけだ。その証拠にわたしと蓮二はベッドに夕焼けに照らされながら裸で横たわっている。わたしが考えたあげく、蓮二を体で引き止めることしかできなかった。でもそれも、もう最後なんだな、と肌と肌が触れ合う空気が名残を惜しんでいた。蓮二の息遣い、こんなに浅かったっけ。わたしは最後という意識を朧気に浮かべながら蓮二に抱かれると、今まで見えてこなかったものが輪郭を描いて。涙を流して、気持ちいいって、口にして。いつものお決まりのパターン、それでもその涙の意味は違って。どうしてこうなったんだろうね、って考えながらわたしは蓮二に貫かれる。わたしってこんなにばかだったんだっけ。計算高い女を見ぬかれてるわたしは、もうその時点で計算高くないねって、どうして気づかないんだろう。ああ、だからわたしとあなたは終わりに近いのかな。どうしてあなたの望むわたしになれないんだろう。どうしたらわたしとあなたの望むものが合わさったの?もうそれは分からない。あなたの苦しそうな呻き声は、それは行為自体の快楽か、わたしたちの別れの岐路に立たされての苦しみなのかも皆目検討つかない。それがわからないから、わたしたちは終わるんだね。あなたの切なげな瞳には穏やかさだけが佇んでいて、これからのわたしたちを指し示している。あなたと今まで体を重ねた時、そんな穏やかさは持ち合わせてなかった。段々と空が暗くなってくる。わたしたちの心の間に隙間ができる。ぴったりとくっついてる体とは相反して宵闇はわたしたちを引き裂いた。そして湿った唇は重なる。さよなら、の言葉を添えて。