連鎖する、俺のテニスは連続したままの何かだった。ずっと果てしなく続いていく、それこそ永久に永遠に。 その繋がりは切れず、仲間との連携は己を確固たる強さを築き上げる礎のようなものだった。 それまでは崩れるとは思わなかった。俺のテニスの牙城は崩れてしまったのだ。 連鎖していく、リンクしていく俺のテニスへの執着や意志や、そういったものがテニスを楽しむ彼を前に飲み込まれた。



会場にあふれるほどの拍手と喝采、声援。地獄の底の穴のようにぽっかり空いた気持ちが俺の足元にあった。 テニスを楽しめだと、自分からそんな気持ちが湧いたことなどこのしばらく、ない。 自分は立海で王者を勝ち得るのだ、それが当然のことなのだと言い聞かせてきた。 そしてそれが自分が信じてきた王道なのだと、テニスを支配するのに必要なことなのだと。 俺が信じていた道は茨の道ではなく、王道はぬるま湯だったに過ぎなかった。 俺が信じていたことは彼の前では容易く、超えるべき壁のひとつに過ぎないのだ。 俺達が目指していたものより遥か高みを、越前リョーマはその果てしなく遠い道のりを歩んでいた。 誰も歩んだことのない、王道ではないその道は茨だらけだ。未知の世界はどこまで及ぶのか全く予想不可能だ。



では過去の幻影がずっと残像として残る俺は何だと言うのだ。何をもって手術を乗り越えてきたというのだ。 あの過酷なリハビリを乗り越えた気持ちは何だ。俺の築き上げてきたものの瓦礫が崩れて沈んでいく。 ぽっかり空いた穴に、音を立てずに崩れていって、何事もなかったかのように。



このままでいいのかと、俺は問う。自分の不完全な身体に、心に、ただ甘んじてるわけにはいかないと。 俺の心が叫びたがっている。俺の心の中に空いた穴は閉じることはないのかもしれない。ただ、道は開けたのかもしれない。 そこはもう知らない世界だ。それに礎は崩れていない。俺の中正気を呼び覚ましてくれる仲間の呼びかけはしっかり残っている。 意識は、ある。俺の中に向けていく意識。テニスを楽しむ、俺にはそれ以外の方法があるはずだ。 俺は俺の築き上げたものを無駄にはしない。連続した鎖は断ち切れど、俺の中にある過去の礎はいつまでもある。 仲間が俺のために残してきた功績は俺の中で消えることのない、足跡となって道標になってくれることだろう。



そう、俺は鎖を断ち切れた。それは王道から道を外れることなのかもしれない。 理想郷だと思っていた場所に俺は向かわない。未知なる世界へ足を運ぼう。その一歩はとても重い。 だが、俺は自分を取り巻く環境に甘えてはならない。前に進むのだ。





知らない世界へ、鎖のない道へ、仲間の道標と共に俺は進んでいこう。