なんで今日にかぎってメガネかけてんの?


こうしてると頭がよく見えるだろ?


そういうこと言ってる時点でバカだよ


少なくとも変身術でレポートをハトに変えて逃がして罰則くらうバカなんかじゃないけど


ばーかばーか!おまえなんて親友といっしょにキモいって女の子にいわれればいいんだ!


あいにくさま、俺のメガネすがたは人気なんでね


ふざけんな、このうぬぼれ!おんなたらし!!


そのおんなたらしに手紙回してるのはどこの女の子かな?





そう最後に書き連ねるとは突然メモに羽ペンを走らせるのをやめて羊皮紙の端くれは無残にもの手でぐしゃぐしゃと丸められてしまった。しまった、と俺はそこで思う。こんなつまらない授業を寝ることとメモ回し以外に過ごす方法はない。その上はからかいがいがあるのでメモを回す相手としてこれ以上の相手はいないと思う。と以前に言ったら口をまごつかせてそれはどうも、と赤くなって俯いた。かわいいやつ。は見た目こそ普通の女の子だけれどどこか凡庸ではないセンスがあって、日々の俺の鬱憤を晴らすためには格好の餌食となった。哀れなやつ。は俺が眼鏡をしているのが気に入らないようで、じっと俺の目線の位置に視線を置きながら不機嫌な顔をしている。だって目が据わってる。まぁ、そんなところもかわいいんだけど。





それダテメガネ?


そうだよ 度入れたら見えないじゃん


ジャマじゃないの?


うっとーしーけどな、かっこよくみえるだろ?





はぐしゃぐしゃにしてきた羊皮紙を広げて再びメモを回しだした。こういうのは駆け引き、ってヤツで俺からは決して回したりはしない。は俺にかまってほしさに負けて再び羽ペンを持っては嬉しそうにメモにその丸っこい字で俺への言葉を書き連ねている。でもからも決して俺を好きだとかは言わない。きっとは俺とのこのヒミツの関係を壊すのを、恐れているんだと思う。





うん まぁどんなシリウスでもわたしは好きだけどね!





と思ったのは俺の間違いだった。隣の人に見えるくらい大きい字で大胆な愛を書かれたメモを俺に回したはそれはそれはかわいく目に映った、なぜか。一時の錯覚か気の迷いかもしれないけどその時の俺は浮き足立った羽ペンでを喜ばす次の言葉を必死で探していた。