こんちくしょう、どちくしょう!ったらなんだってんだ。なあにが俺が悪いってんだ。浮気なんてしてねぇのによ!なんだよ、だって悪いんじゃねぇか。大体が最近なかなか構ってくれないのが悪い。浮気だって、向こうの女の子が勝手にキスしてしてきただけで、断じて俺は悪くない!拒めば良かっただと?状況も考慮に入れてくれ!!

俺はむしゃくしゃと恋人と来るはずだったホグスミードを歩いている。それもこれも昨日との喧嘩が原因だ。試験も明けて、ようやくホグスミードへの許可が降りる日だっつーのにその前の日にあの話をぶり返してきたというもんだ。本当に、女ってたまに意味分からないことするよなぁ。大体あの話は俺が謝って、その後なんでかめそめそといつまでもしょげているを慰めようと思ったらなんだかそういう雰囲気になって久しぶりの情事に俺は溺れていったけどあれでチャラなんじゃなかったのか?いや、のお許しの言葉、聞いてなかったもしれねぇ・・・。でも、そのあと別になんでもなかったようにはしていたしそれにそれは3日も前の話だ。なんでわざわざデート前日にあの話で泣き喚きちらしたのが意味わかんねぇ、わけわかんねぇ。

俺は頭を抱えながらゾンコの店を通りすがると、ジェームズが一人紙袋いっぱいに商品詰めているのが見えた。しかし声をかけようにもあいつは今日俺がと過ごしていると思っている。昨夜、愛しのエバンズと出かけられないことをいいことに、俺に散々嫌味を言ってきたのだ。話しかけてやる義理なんかない。俺はこの際とことんひとりぽっちをとことん味わおうと思った。普段は寮にいればうるさいジェームズやお小言のリーマスそれになんらかドジをやらかすピーターがいて落ち着けやしないし、談話室に戻ればに構ってほしくての髪をいじってたり太腿を撫でるのに大忙しだし、とにかく俺には一人の時間が必要だ。そうだ、俺は一人になるべきだ。

俺は自分に言い聞かせるように雪道をざくざくと歩いていく。けれど独りの散歩はどこかしら寒い。いいや、寒いのは季節と天気のせいだ。鼻を真っ赤にさせるのもこの寒さのせいだ。俺はそう考えざるを得なかった。ポケットに突っ込んだ手はそれ以外に行き場はないし、のんきな歩幅とは裏腹に俺は焦燥を感じた。一人になるのは久しぶりだから、きっと俺はそれに戸惑っているのかもしれない。ホグワーツにいれば仲間の一人は必ず俺の傍にいたしそうでもない場合は俺がもしくはが俺にべったりだから一人になる時なんてトイレやシャワーの時だけだ。そう考えると俺は随分と人という人に囲まれた生活をしていたんだなぁ、と思うと情けなくなる。集団行動は好きだけど、俺ってそんなに一人になるのが嫌いだったかな。でも確かに俺は一人になることがかなり少ない。恋人といつも一緒にいたいっていう気持ちは置いておくことにして、ジェームズのやつらと常にべったり、というのは表現的にかなり気持ち悪い。うげ、吐きそう。でも今はそんな冗談も聞いて笑ってくれたり気持ち悪がってくれたりしてくれる人が傍にいない。そうだ、俺は寂しがりやさ。

街角を歩けば「シリウスー!」と黄色い声を上げて手を振ってくれる女の子たちだっているけど、それだけじゃぁ俺の寂しさなんて埋まらないんだ。そういえば俺って常に人が傍にいるからひとりでいる今がこんなの妙に寂しく感じるのかも。でもでも、今更俺にできることったらありゃしない。あるとすれば、ハニーデュークスでラズベリー味のチョコレート生クリームのケーキを一つ特注で注文して、に懺悔しながらケーキを捧げることだけだ。・・・・・・あるじゃないか。でも、この寂しさってよくよく考えると贅沢の賜物だよな。たまには貧乏人の気持ちも理解しろってことか。でも俺ってやっぱり坊ちゃん気質なのかも。うーん、それってすごくかっこ悪い気がすんだけどなぁ。

そもそも俺は一体なんでこんなに一人しんみりしながらとぼとぼと歩いているのかということだ。そこら中には俺を誘おうと目をギラギラさせてる女の子たちがいるし、ゾンコに行けばいらない意地を張らなければジェームズがいるし、きっとリーマスとピーターのペアだってきっとそこら辺の本屋にでもいるだろ。でも俺はそこら辺の俺の名声と家柄と見かけにしか興味ない女なんて願い下げだし、変な意地を張らない自信もないし、リーマスのお小言を喰らうのもピーターの尻拭いさせられるのも勘弁だ。じゃぁなにがしたいっていうと、結局俺はと仲直りしたいだけなんだ。つくづく俺って、彼女に献身的だよなぁ。

とりあえず色々珍しく考えすぎて疲れたので、俺は今からバタービールをテイクアウトしにいって、ハニーデュークスにラズベリー味とチョコレート生クリームケーキを特注しにいって、最後に光りモンひとつ買っていけばの機嫌も直るだろ。結局金に頼ってしまう俺は坊ちゃんだけど、が笑って許してくれさえすれば金なんて愛に代えようがないのさ。浮気されたって誤解されたって俺は結局君に許しを請うてしまうんだ。ああ、なんて俺って君だけの愛を求めて彷徨える偽善な紳士なのだろう!