May you eat the poisoned apple. (Black Brothers) 兄さんとはあれから行方知らずで、が嘆き悲しんでいた。母さんは金きり声をあげて屋敷中を駆け回るし、家系図から兄さんの名前は抹消されるしクリーチャーのボケは一層拍車をかけて悪くなっていくし僕も気が滅入っていた。そんな騒がしい中だけは一人部屋に閉じこもりめそめそと泣いていて、僕はにつきっきりで慰めている。それもそうだ、唯一の最愛の姉が何も言わずに自分を置いていってしまったのだから。 「、泣いたってしょうがないよ。いずれ兄さんは屋敷を出て行くと行っていたんだから、当然もそれに着いていく気だったんだろう」 「でもわたしに何も言わないで出て行くなんて・・・ああ、お姉さまは一人しかいない妹よりシリウスを選んだのね・・・!」 はが自分より兄さんを選んだことに対して涙を流しているようだった。手入れがされた、絹のような触り心地の髪にキスを落としてご機嫌を取ろうと思ってもはハンカチーフを顔から離そうとしない。ハンカチーフを濡らす涙など、とうに枯れ切っているだろうに。そんな中コンコン、と白く覆われた窓を叩く音ががぐすぐすと涙ぐむ音に紛れて聞こえた。僕は窓辺へ向かい、窓を開くとひゅう、と凍てつくような風が吹く。それと同時に一羽の梟が舞い込んできて、寒さのあまりに手紙を机の上に落とした後凄いスピードで暖炉へと飛び出しそのまま絨毯の上にぽとり、と落下した。こんな時に一体誰からだろうと、が手紙の送り主が気になるようにちらちらと視線を向けるのを無視して封筒を開いた。 「・・・兄さんとからだよ」 「お姉さま?!」 は先ほどまで泣いていたのが嘘かのようにころっと表情を変えて手紙へと飛びついた。その内容は、兄さんとの今の状況下がつらつらと書かれたものだ。 『親愛なるレギュラス、そして私の最愛の妹へ 出て行くのに黙っていたのは悪いと思っているわ。でもにはレギュラスがいるから大丈夫でしょう?今私達はマグルの住む街に住んでいるわ。少し不便だけれどなかなか快適よ。もう、あんな堅苦しいお屋敷には二度と戻ることがないと思うと夢みたいよ!それと、最後に一つ言っておくけれどこれからあなたとは向かい合わせになると思うの。でも姉妹同士、行く道が違うのだからそうならざるを得ないのだと思うわ。でももしそういうことになっても、私はいつまでもを愛しています。手紙はもう送らないことにすると、シリウスと約束したので本当にこれが最後よ。レギュラス、私の可愛いをよろしく頼むわね。 より』 は最後の手紙はもう二度と送らないということに絶句していた。ベッドに突っ伏し悲惨な顔をして再びめそめそと泣き出した。はきっと僕達がなぜ向かい合わせになるということを理解していない。この家に従うということは当然、僕は死喰い人となるのだ。それをは分かっているのだろうか。確かにはスリザリンながらも親友にマグルのリリー・エバンズもいたことだし、兄さんの親友らしい純血だがマグル贔屓のジェームズ・ポッターとも親しい。だけど僕は兄さんが死喰い人にならないことよりもが本当に兄さん側へと行ってしまったことに、僅かながらショックを受けた。だって、僕によくしていてくれて、の次に慕っていた人なのに。 僕はを慰めるように髪を撫でると自分さえもがその動作に慰められている気さえした。漠然と、虚無感が襲う。そんな僕達を置いて兄さんとは光り輝く世界へと旅立ってしまった。数年後、僕達は周囲が望むように式を挙げ、そして僕は死喰い人となる。そして、ヴォルデモートを欺き、哀れなしもべ妖精にロケットを託したまま死を遂げるのだ。若くして夫を亡くした、そして騎士団に入団した2人は今どうしているのだろうか。結局、毒林檎を食べさせられる羽目になったのは自分が王子と酔いしれ姫に恋した哀れな貴族だったのかもしれない。だから僕は、それからの物語は、知らない。 |